ウイスキー「富士」のボトルを手に取って、底面を見てみてください。ガラスに富士山のシルエットが型押しされています。普通に棚に置いたら見えない場所。この「気づいた人だけが気づく」仕掛けが、このブランドの性格をよく表しています。
ラベルも同じです。派手さのない白い紙に、薄墨で「富士」の二文字。情報量が少ない。でも、読み解くと3つの国の知恵が静かに刻まれています。
ラベルを眺めてみよう
シングルブレンデッドのボトルを手に取ると、まずラベルの「白さ」に気づきます。
グレーがかった白地に、薄墨で大きく「富士」の漢字。その横にフォーマルな欧文で「FUJI」「SINGLE BLENDED JAPANESE WHISKY」。余白が多い。
これは意図的な設計です。グラフィックデザイナーの廣村正彰氏が手がけたこのラベルは、「日本らしい引き算の美」を追求したもの。飾り立てるのではなく、削ぎ落とすことで存在感を出す——茶室や和紙の美意識に近い発想です。
裏ラベルには「The gift from Mt. Fuji」と書かれています。富士山からの贈り物。このフレーズが、次の物語への入り口です。
富士山の麓で造る理由
答えは水です。
富士山に降った雨や雪は、溶岩層を何十年もかけてゆっくり浸透し、伏流水となって地下に蓄えられます。富士御殿場蒸溜所は、その伏流水を地下100メートルの深井戸から汲み上げて仕込み水に使っています。
蒸留所の標高は約620メートル。東京スカイツリー(634メートル)とほぼ同じ高さです。夏は霧が頻繁に発生する湿潤な気候で、ウイスキーの熟成に影響を与える空気の質まで、この土地ならではのものがあります。
3つの国の知恵が集まった蒸留所
富士御殿場蒸溜所には、もう一つ珍しい出自があります。
1973年、キリンビール、カナダのシーグラム社、スコットランドのシーバスブラザーズ社の3社合弁で蒸留所が設立されました。日本のビール製造の技術、カナダのグレーンウイスキーのノウハウ、スコットランドのモルトウイスキーの伝統——3つの国の知恵が最初から注ぎ込まれています。
結果として、一つの蒸留所の中にモルトウイスキーとグレーンウイスキーの両方の製造設備を持つ、世界的にも珍しい「複合蒸留所」が生まれました。
ラベルに書かれた「SINGLE BLENDED」はこの蒸留所の成り立ちそのもの。一つの蒸留所で作ったモルトとグレーンだけをブレンドした、という独自のカテゴリです。通常のブレンデッドウイスキーが複数の蒸留所の原酒を混ぜるのに対し、富士はすべてが一つの場所から生まれています。
ISC金賞、その意味
ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)は、ロンドンで毎年開催される世界最大級の蒸留酒品評会の一つです。
「富士」のシングルグレーンはこのISCで5年連続GOLD受賞。さらに2024年には50周年記念エディションが最高賞「トロフィー」を獲得しています。
国内の知名度より海外での評価が先行したブランド。山崎や響に比べると知名度はまだ控えめですが、海外のウイスキー愛好家の間では着実に評価を積み上げています。
ラインナップ
| ライン | ラベルの特徴 | 価格帯 |
|---|---|---|
| シングルブレンデッド | グレーの上質紙ラベル・薄墨の「富士」 | 約5,000〜5,500円 |
| シングルグレーン | クラフト紙風の温かみあるラベル | 約4,500〜5,000円 |
| シングルモルト | クラフト紙ラベル・赤の「富士」文字 | 約5,000〜5,500円 |
| 富士山麓 Signature Blend | ダークトーン・山の稜線 | 約4,000〜4,500円 |
3種を並べると、ラベルの色味がそれぞれ異なるのがわかります。同じ「富士」でもラベルの雰囲気が違う。お店で見かけたら、見比べてみてください。
お家に未開封の富士山麓が眠っていたら
2019年に終売となった「富士山麓 樽熟原酒50°」は、コレクター市場で当時の定価を上回る価格がつくことがあります。現在の Signature Blend とはラベルデザインも瓶の形状も異なるため、古い「富士山麓」が眠っているなら確認してみてください。
ラベルが古いお酒や見慣れないボトルは、思わぬ価値がつくこともあります。
→ 古いお酒の価値を無料でチェックしてみる(福ちゃん)
こんな人に合う一本
- ラベルに派手さはいらない、静かな品のあるボトルを探している方
- 山崎や響以外のジャパニーズウイスキーを知りたい方。5,000円台で国際品評会の金賞受賞歴がある銘柄です
- 「シングルブレンデッド」という独自カテゴリに興味がある方。一つの蒸留所でモルトもグレーンも造る珍しい出自のウイスキーです
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | キリン シングルブレンデッド ジャパニーズウイスキー 富士 |
| 蒸留所 | 富士御殿場蒸溜所(静岡県御殿場市) |
| 種類 | シングルブレンデッド ジャパニーズウイスキー |
| アルコール度数 | 43% |
| 容量 | 700ml |
| 価格帯 | 約5,000〜5,500円(Amazon実売) |
| 蒸留所設立 | 1973年 |
| 仕込み水 | 富士山伏流水(地下100m、硬度約55の軟水) |
| 製造者 | キリンディスティラリー |
※シングルブレンデッドとは、一つの蒸留所で作られたモルトウイスキーとグレーンウイスキーだけをブレンドしたもの。複数の蒸留所の原酒を混ぜる通常のブレンデッドウイスキーとは異なります。
→ Amazonで口コミも見てみる(富士 シングルブレンデッド 700ml)
→ 楽天市場で価格を見てみる(富士 700ml)
ボトルの底面を、もう一度見てみてください。あの富士山のシルエットは、普通に棚に置いたら誰にも見えません。
「気づいた人だけが気づく」——派手さではなく、知ったときの驚きで記憶に残るウイスキー。ラベルの引き算のデザインも、底面の型押しも、静かに同じことを語っています。
🔍 自分に合うウイスキーがわからない?
30秒診断で見つけてみる
この記事を読んだ方へ
同じジャパニーズウイスキー:
ウイスキーの基礎知識:
💰 予算で選びたい方へ: 1万円以下で失敗しないジャパニーズウイスキー7本で価格帯ごとに整理しています。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
※この記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。
リンクを経由してご購入いただいた場合、当サイトが報酬を受け取ることがあります。
※価格は記事執筆時点のものです。最新の価格は各販売サイトでご確認ください。


