サントリーローヤルのボトルに刻まれた「酉」と「鳥居」——80歳の創業者が最後に完成させたブレンド

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洋酒売り場で、3,000円台のウイスキーの棚を眺めていたとき、独特の四角いボトルが目に留まりました。キャップの形がどこかで見たことのあるシルエットをしている。よく見ると、ラベルに「Established 1899」と書いてある。でもこのウイスキーが発売されたのは1960年のはず。

気になって調べてみたら、このボトルには三つの暗号が隠されていました。

ラベルとボトルを眺めてみよう——三つの暗号

暗号① ボトルの形は漢字の「酉」

サントリーローヤルのボトルを棚に並ぶ他のウイスキーと比べると、独特の四角いフォルムが目を引きます。この形は、漢字の「酉(とり)」を模しています。

「酉」は十二支の「とり」であると同時に、古来「酒壺」「酒器」を意味する一文字です。つまりこのボトル自体が、「酒」という概念を形にしたもの。ウイスキーのボトルに漢字の意味を込める発想は、洋酒であるウイスキーに和の美意識を持ち込んだ鳥井信治郎らしい選択です。

暗号② キャップは椎尾神社の鳥居

ボトルの上に目を移すと、キャップが緩やかに上向きにカーブしています。これは山崎蒸溜所の奥にひっそりと鎮座する椎尾神社(しいおじんじゃ)の鳥居がモチーフです。

椎尾神社は、晩年の鳥井信治郎がこよなく愛した場所でした。創業者の「鳥井(トリイ)」と神社の「鳥居(トリイ)」——この偶然の一致が、ボトルの頂点に刻まれています。

暗号③ ラベルの「Established 1899」

ラベルには「Suntory Whisky」「ROYAL」「Established 1899」の文字が並んでいます。1899年はサントリー(当時の壽屋)の創業年であり、ローヤルの発売年(1960年)ではありません。

つまりこのラベルには「会社の全歴史を背負う一本である」という宣言が刻まれています。他のサントリーウイスキーのラベルに「1899」がここまで大きく入ることはありません。ローヤルだけが背負っている数字です。

創業者の遺作——80歳のマスターブレンダー

1960年、寿屋(のちのサントリー)の創業60周年を記念して、ローヤルは誕生しました。「60周年」と「1960年」、二つの「60」が重なった年です。

開発当時、創業者の鳥井信治郎は80歳を超えていました。もう自ら蒸溜所に立ってブレンドの瓶を振る体力はありません。ブレンドの細部は次男の佐治敬三と初代チーフブレンダーの佐藤乾に託されました。

二人は山崎蒸溜所で試作を重ねてはそのたびに鳥井のもとへ持参し、鳥井の「鼻」——嗅覚による最終判断を仰ぎました。80歳を超えてなお、嗅覚だけでブレンドの完成度を判断できる創業者。OKが出るまで何度もブレンドを調整し続けた——こうして完成した配合は、のちに「黄金比」と呼ばれるようになります。

黄金比とは、建築やデザインの世界で「人間が最も美しいと感じる比率」として知られるもの。パルテノン神殿やモナ・リザの構図に使われているとされる比率です。ローヤルのブレンドがそう呼ばれるのは、原酒の配合が美しいバランスに到達しているという敬意の表現です。

ローヤルが世に送り出されてから2年後の1962年、鳥井信治郎は83歳で逝去。ローヤルは文字通り、創業者の「最後の仕事」になりました。

1980年代のCMが作った「ローヤルの世界観」

サントリーローヤルを語るなら、1980年代のテレビCMは外せません。

1980〜1982年、俳優の森山周一郎がナレーションを担当したシリーズ。あの低く渋い声で語られた「男はグラスの中に、自分だけの小説を書く事が出来る」というコピーは、当時の空気を象徴するものでした。

1983〜1984年には、山下達郎のアカペラ曲「I LOVE YOU〜まだ逢えなくて〜」をBGMにしたパントマイムCMが反響を呼びます。音楽と映像だけでウイスキーの世界観を作る——言葉を使わない贅沢な広告でした。

さらに1983〜1985年には、ランボー、ガウディ、マーラーなど歴史上の偉人を取り上げたシリーズが続きます。この広告戦略によって、ローヤルは単なるウイスキーではなく「昭和のステータス」になりました。

サントリーオールドとの違い

オールドとローヤル、どちらを選ぶか迷う方は多いです。ひとことで言えば、オールドが「昭和のサラリーマンの日常の一杯」だったとすれば、ローヤルは「昭和のサラリーマンの憧れ」でした。

項目オールドローヤル
発売1950年1960年
当時の位置定番の一本高級品
価格約2,500円約3,300〜4,600円
ボトルダルマ型(親しみやすい)「酉」字型(威厳がある)
設計者鳥井信治郎鳥井信治郎(最後の仕事)

終売ラベルの世界

ローヤルには、すでに終売になっているラベルが複数存在します。

時期ラベル特徴
1960年代初代「’60」ラベル創業60周年記念。金色の文字
1980年代「SR」ラベルSUNTORY ROYALの頭文字。向獅子マーク付き
1995〜1997年「青のローヤル」プレミアム12年。わずか2年で終売した最も希少な一本

特に「青のローヤル」は販売期間がわずか2年。ローヤルシリーズの中でも最も希少とされています。終売品は買取市場で値がつくことがあります。家に古いローヤルのボトルが眠っているなら、ラベルを確認してみてください。お酒の買取について詳しくはお酒買取サービス比較でまとめています。

こんな人に合う一本

  • サントリーオールドからもう一段上の一本を探している方。価格差は約1,000円ですが、ボトルの意味と創業者の物語が一気に深くなります
  • 山崎が手に入らないけれど、サントリーの本格派が欲しい方。ローヤルならスーパーでも見かけます
  • ボトルのデザインに意味やストーリーがある一本を選びたい方。「酉」「鳥居」「1899」の三つの暗号を知ると、見え方が変わります
  • 1980年代のサントリーCMに記憶がある方。あの時代の空気がこのボトルに残っています

基本情報

項目内容
正式名称サントリーローヤル(SUNTORY ROYAL)
メーカーサントリー
種類ブレンデッドウイスキー
蒸溜所山崎蒸溜所
度数43%
内容量700ml
価格帯約3,300〜4,600円
発売1960年(創業60周年記念)
ボトルデザイン漢字「酉」を模した形状、椎尾神社の鳥居を模したキャップ

ブレンデッドウイスキーとは、大麦麦芽から造るモルトウイスキーと、トウモロコシなどの穀物から造るグレーンウイスキーを混ぜ合わせたウイスキーのこと。

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3,000円台のウイスキーの棚に並んでいた、あの独特のボトル。形は「酉」、キャップは「鳥居」、ラベルの数字は「1899」。三つの暗号はすべて、創業者・鳥井信治郎の物語に繋がっていました。

洋酒売り場でローヤルを見かけたら、キャップの緩やかなカーブを眺めてみてください。あれは山崎の森の奥にある、小さな神社の鳥居です。


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