響のラベルには、24の季節とブラームスの交響曲が静かに刻まれている

ウイスキー
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響のボトルを初めて手に取ったとき、指先に不思議な感触がありました。平面ではない。面がいくつも連なっている。思わず数えてしまいました。24面。なぜ24なのか、ラベルを見ただけではわかりません。でも調べてみると、この数字には日本ならではの意味が込められていました。

ボトルを手に取ると「24」がわかる

響のボトルを手に持つと、指に細かい面がいくつも連なっているのを感じます。

数えると、24面。

この数字には二つの意味が込められています。

一つは、1日の24時間。もう一つは、日本の暦で1年を24に分ける「二十四節気」——立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨……と、およそ2週間ごとに移り変わる日本独自の季節の数え方です。

ウイスキーは樽の中で何年も眠ります。日本の四季を何度も繰り返し、立春から大寒までの二十四節気を何巡もしながら、少しずつ琥珀色に変わっていく。響のボトルは、その「時の重なり」を24の面で表現しています。

ボトルを光にかざすと、24の面がそれぞれ異なる角度で光を反射します。テーブルに置くだけで絵になる——響が「飾っておきたくなるウイスキー」と呼ばれる理由の一つです。

和紙と墨——1,500年の伝統を纏うラベル

響のラベルに触れると、普通の紙とは明らかに違う質感があります。

これは越前和紙。福井県で約1,500年にわたって漉き続けられてきた、日本最古級の和紙の一つです。紙幣にも使われる技術をルーツに持ち、その丈夫さと美しさは世界的に評価されています。

ラベルの和紙をプロデュースしたのは、和紙デザイナーの堀木エリ子氏。1枚1枚、手でちぎって縁の質感を出す手法で仕上げられています。だから同じ「響」のボトルでも、ラベルの縁をよく見ると微妙に表情が違います。手作業ならではの個体差が、工業製品にはない温もりを生んでいます。

そしてラベルの中央に力強く書かれた「響」の一文字。

この文字を書いたのは、書家・荻野丹雪(おぎの たんせつ)氏。NHK大河ドラマ「新選組!」の題字や、大阪花博「咲くやこの花館」のロゴなども手がけた方です。ちなみに荻野丹雪氏は、サントリーのもう一つの銘柄「知多」のラベルも手がけています。同じ書家の手による「響」と「知多」を並べて見比べると、同じ筆でありながらまったく異なる表情であることに気づきます。

越前和紙の上に、書家の墨。この組み合わせだけで、1,500年の紙の歴史と日本の書道文化が一つのラベルに凝縮されています。

ブラームスの交響曲から生まれた「ハーモニー」

響が生まれたのは1989年。サントリー創業90周年の年です。

2代目マスターブレンダーの佐治敬三は、この節目に「サントリーの粋を結集した最高傑作を出したい」と考えました。特命を受けたのはチーフブレンダーの稲富孝一。

稲富は、ウイスキーの造り手であると同時に、長年ヴィオラを嗜む音楽家でもありました。新しいウイスキーの完成形をイメージするとき、彼の頭に浮かんだのはクラシック音楽でした。

「ブラームスの交響曲第1番、第4楽章のようなハーモニー」

この楽章は、長い苦悩の果てに辿り着く歓喜のフィナーレとして知られています。稲富はこの音楽のように、多様な原酒が一つの調和を成すウイスキーを目指しました。

山崎蒸溜所と白州蒸溜所。二つの蒸留所が持つ80万個以上の樽から、30種以上のモルト原酒と数種のグレーン原酒を厳選。そのキーモルト(ブレンドの核となる原酒)に選ばれたのは、ミズナラ樽で長期熟成されたモルトでした。

ミズナラ(水楢)は日本にしか自生しない樽材で、白檀や伽羅のような東洋的な香りを原酒に与えます。海外ではJapanese Oakと呼ばれ、ウイスキー愛好家の間で特別な存在です。

「人と自然と響きあう」——サントリーの企業理念から名付けられた「響」。それは単なる商品名ではなく、サントリーが企業としてのアイデンティティを込めたブランドです。

白と黒——二つの「響」を並べてみる

ジャパニーズハーモニーと21年の2本を並べると、同じ「響」でもラベルの表情はまったく異なります。

ジャパニーズハーモニー(JH)は、白い越前和紙のラベルに、荻野丹雪の黒い「響」の一文字。銀色のキャップ。明るく、清潔感のある佇まいです。2015年発売のノンエイジタイプで、ブレンダーが自由に原酒を選べる分、安定した品質を保ちやすい設計になっています。希望小売価格は税込8,800円。

一転して、21年は黒。和紙の色が変わるだけで、同じ「響」の文字がまったく違う印象になります。金色のキャップ。酒齢21年以上の原酒だけを使用しています。赤ちゃんが成人するほどの歳月を樽の中で過ごした原酒です。

ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)でトロフィー(最高賞)を5年連続受賞。2017年には全部門の頂点「シュプリーム チャンピオン スピリット」も獲得——いずれも史上初の快挙です。WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)では「World’s Best Blended Whisky」にも選ばれています。

お家に響21年が眠っていたら

響21年の定価は55,000円(税抜)ですが、現在の買取相場は63,000〜69,000円(箱付き)。定価を超える価格で取引されています。

限定ボトルになるとさらに桁が変わります。

ボトル買取相場(2026年時点)
響21年(現行・箱付き)63,000〜69,000円
響21年 ミズナラ100周年記念約450,000円
響21年 九谷焼 吉田屋風花鳥図角瓶約250,000円

「以前もらったけれど棚に置いたまま」「コレクションを整理したい」という方は、まずラベルの状態を確認してみてください。箱や付属品が揃っているかどうかで査定額が変わります。

ラベルが古いお酒や見慣れないボトルは、思わぬ価値がつくこともあります。
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こんな人に合う一本

  • 日本の伝統工芸やものづくりに価値を感じる方。越前和紙と書家の墨、24面カットのボトルは、それだけで日本のものづくりの結晶です
  • 山崎白州がシングルモルトなら、響はそれらを含む原酒を一つに調和させたブレンデッド。サントリーの「集大成」を知りたい方に
  • ウイスキーを飾って眺めるのが好きな方。24の面が光を反射するボトルは、棚に置くだけで絵になります

基本情報

項目内容
正式名称サントリーウイスキー 響
英名HIBIKI SUNTORY WHISKY
種類ブレンデッド ジャパニーズウイスキー
原酒山崎蒸溜所・白州蒸溜所のモルト+知多蒸溜所のグレーン
アルコール度数43%
容量700ml
希望小売価格JH: 税込8,800円 / 21年: 税抜55,000円 / 30年: 税抜160,000円
発売1989年(創業90周年記念)
ボトルデザイン24面カット(二十四節気+24時間)
ラベル素材越前和紙(堀木エリ子氏プロデュース)
ラベル揮毫書家・荻野丹雪
主な受賞歴ISCトロフィー5年連続+Supreme Champion Spirit(21年・史上初)/ WWA World’s Best Blended Whisky

※ブレンデッドウイスキーとは、複数の蒸留所で造られたモルト原酒とグレーン原酒を混ぜ合わせたウイスキーのこと。一つの蒸留所だけで造る「シングルモルト」とは異なります。

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24面のボトルを、もう一度手に取ってみてください。指先に触れる一つひとつの面が、立春から大寒まで——日本の二十四節気を表しています。

ブラームスの交響曲をイメージしたブレンダー。越前和紙をちぎって仕上げるデザイナー。墨で一文字を書く書家。響のラベルには、それぞれの仕事が静かに重なり合っています。24の面と同じように、一つひとつは目立たなくても、全体で一つの調和——HARMONY——を成している。そういうウイスキーです。


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この記事を読んだ方へ

響の原酒を生む蒸留所:

  • 山崎 — 千利休が愛した水と、日本最古の蒸留所の物語
  • 白州 — コンビニのあの天然水と同じ水源で造られている
  • 知多 — 43年間の沈黙を破った「サイレントスピリット」

同じラベルの書家:

  • 知多 — 荻野丹雪の筆による、もう一つの一文字

ウイスキーの基礎知識:


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