ウイスキーの5大産地——棚に並ぶ瓶が、全部違う顔に見えてくる

PR:本サイトはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を利用しています。紹介料を得ていますが、記事内容は客観的情報に基づき中立的に執筆しています。

「スコッチとバーボンって何が違うの?」

友人にそう聞かれて、固まりました。

正直、どちらも「英語が書いてある茶色い瓶」にしか見えていませんでした。棚に並んだウイスキーは全部同じに見えるし、「ウイスキー好きなんでしょ?」と言われるたびに、「好き……というか、ボトルのデザインが好きなだけで……」と言葉を濁していました。

でもあるとき、ボウモアの瓶に「EST. 1779」と刻まれているのに気づきました。隣に並んでいたジャック・ダニエルの瓶と見比べてみたら、形も書体もラベルの空気も、何もかも違う。今まで「全部同じ」に見えていたのは、知識がなかったからではなく、「見分ける目」を持っていなかったからだったのです。

味はわかりません。でも、瓶の見た目から「どこの国のウイスキーか」は、少しずつ見えるようになりました。

ラベルの読み方」の記事では文字情報に、「ボトルデザインの秘密」の記事では瓶の形や色に注目しました。今回は「国ごとの顔の違い」に目を向けてみます。ウイスキーには5つの大きな産地があり、それぞれの瓶は、驚くほど違う空気を纏っています。

まずはこの2つだけ——スコットランドとアメリカの瓶を並べてみる

ウイスキーの産地は5つありますが、全部覚える必要はありません。まずは2つだけ。スコットランドとアメリカ。この2つの瓶を並べてみると、「全部同じ」だった棚の景色が一気に変わります。

スコットランド——創業年と邸宅のイラストが並んでいるだけで、「適当に選んだ感じ」がしなくなる

ボウモアの瓶を手に取ると、ラベルに「EST. 1779」と刻まれています。ザ・マッカランには金色の邸宅のイラスト。ザ・グレンリベットのラベルには大きく「THE」の文字——これは「本家はうちだ」という宣言で、かつて多くの蒸留所が”グレンリベット”を名乗ったため、1884年に商標を勝ち取って付けた”THE”です。

スコッチウイスキーのボトルは、丸い瓶が多く、ラベルには創業年や歴史を感じさせる意匠が並んでいます。

なぜこの見た目に惹かれるのか。たぶん、紋章や創業年が並んでいるのを見ると、味がわからなくても「これは適当に選んだものじゃないな」という感じがするからです。よくわからないけど、「雑なものを手にしている感じ」がしない。なぜそう感じるのかはうまく説明できません。でも、200年以上前からこの形でやっている蒸留所がある、という事実が、たぶんそう感じさせています。

スコッチの瓶には、「歴史を背負ってる感じ」がある。それは棚の前で手に取った瞬間に、なんとなく伝わってきます。

アメリカ——太い書体と赤い封蝋を見ると、「飾ってない人だな」と思う

ワイルドターキーのラベルには鷲と太い書体。フォアローゼズの四角い瓶にはバラが刻まれています。ジャック・ダニエルは黒いラベルに白い文字だけ。メーカーズマークの赤い封蝋は、今でも一本ずつ人の手で垂らされています。

アメリカのウイスキーには四角い瓶が多く、書体が太く、装飾よりも「潔さ」を感じるデザインが目立ちます。

スコッチの瓶が「歴史を背負ってる感じ」だとすると、アメリカの瓶は「堂々としてるけど、別に偉そうじゃない」。紋章も創業年も前に出さないのに、妙に自信がある。「高級感」を狙っていないのに、棚で目が止まる。そういう強さがあります。

この2つ——スコットランドとアメリカ——の瓶を並べてみるだけで、棚の景色がかなり変わります。「こっちは歴史を纏ってるな」「こっちは堂々としてるな」と、瓶がそれぞれ違うものに見えてくる。味がわからなくても、見た目の違いは感じられます。

日本——「静かだけど、ちゃんとそこにいる」瓶がある

スコットランドとアメリカの違いがわかると、3つ目の「顔」にも気づくようになります。日本のウイスキーです。

響の24面カット、角瓶の亀甲模様、知多の和紙——「余白」が見えてくる

のボトルを手に取ると、表面に細かなカットが指に触れます。この面の数は24。日本の二十四節気——春夏秋冬をさらに細かく分けた、日本独自の季節の区切り——を表しています。派手さは何もないのに、「これは安いものじゃないな」とわかる。指が教えてくれます。

角瓶の表面には亀甲模様。薩摩切子——鹿児島の伝統的なガラス工芸——がモチーフで、1937年の発売以来、ほぼ90年間——昭和の始まりからスマートフォンの時代まで——変わっていません。知多は和紙のラベルに筆文字。「風」をコンセプトにしたウイスキーで、ラベルから静けさが伝わってきます。

スコッチにもアメリカにもない特徴があります。「押し付けない」こと。紋章も太い書体も使わずに、カットや模様や紙の質感で、「静かだけど、ちゃんとしている」ことを伝えている。西洋のウイスキーとは明らかに違う空気です。

新しいクラフト蒸留所——見慣れない瓶が増えている

三郎丸や厚岸など、近年は新しいクラフト蒸留所も増えています。サントリーやニッカとは違うモダンなデザインのボトルが棚に並ぶようになりました。「日本のウイスキー」の顔は、一つではなくなっています。

海外の人に「日本のウイスキーって何がある?」と聞かれて、角瓶しか浮かばなかったことがあります。しかも「角瓶」を英語で何て言うのかもわからなかった。”uh… Kakubin?”って言って、通じませんでした。あの情けなさは覚えています。でも今なら、もう少しだけ話せます。「日本のウイスキーは、瓶が静かなんだよ」と。うまい説明ではないかもしれませんが、見てもらえばたぶん伝わります。

「あれ、これもウイスキーだったのか」——アイルランドとカナダで気づいたこと

スコットランド、アメリカ、日本。この3つで棚のかなりの部分はカバーできます。でも、あと2つ知っておくと、ちょっとした発見があります。

「1608」——スコッチだと思っていた瓶の出身地が、アイルランドだった

ブッシュミルズというウイスキーを初めて見たとき、丸い瓶にクラシックなラベルで、スコッチだと思いました。でもラベルをよく見ると、「EST. 1608」と書いてある。1608年。ボウモアの1779年よりずっと古い。

調べてみたら、アイルランドのウイスキーでした。1608年に国王ジェームズ1世から蒸留の免許が下りた、世界で最も古い免許を持つ蒸留所です。最近のボトルは、近くにあるジャイアンツ・コーズウェー——何万本もの六角形の石柱が海岸に並ぶ自然遺産——の形がモチーフになっていて、瓶の角に六角形の面影があります。

アイルランドのウイスキーは、スコッチと似た丸い瓶が多いのですが、少し雰囲気が違います。ジェムソンのラベルには家紋と「Sine Metu」の文字。ラテン語で「恐れることなかれ」。ジェムソン家の家訓がそのままラベルに入っているのです。自分の家のモットーをボトルに刻む——その選択に、どこか気取らない自信を感じます。スコッチの瓶が「歴史の重み」を纏っているとすると、アイリッシュは同じくらい古い歴史があるのに、もう少し風通しがいい。「構えなくていい」感じがある瓶です。

「スコッチっぽいな」と思った瓶が、実はアイルランド生まれだった——そういう発見が、産地を意識する面白さかもしれません。

カナディアンクラブが「カナダのウイスキー」だと、ちゃんと意識したことがなかった

カナディアンクラブ。名前は知っていました。居酒屋やスーパーで見たこともある。でも、「これはカナダのウイスキーだ」と思って手に取ったことは一度もありませんでした。

もともとは「クラブ・ウイスキー」という名前で、アメリカの法律で原産国の表示が義務づけられたときに「カナディアン」が付きました。名前の由来が「カナダ産だと書かされたから」というのは、少し面白い話です。ラベルにはCCのモノグラムと「IMPORTED FROM CANADA」の表記。すっきりしたデザインで、スコッチの重厚さともアメリカの力強さとも違う、落ち着いた印象です。

「名前を知っている」と「ちゃんと見ている」は違う。それだけのことですが、意識してからは、棚での見え方が少し変わりました。

ここまで読んで、「自分はどんな瓶に手が伸びるんだろう?」と思った方は、「ウイスキーえらび診断」で4つの質問に答えてみてください。見た目の好みから、自分に合う一本が少し見えてきます。

棚の前で——3つだけ見れば、瓶の出身地がなんとなくわかる

5つの産地の「顔の違い」をまとめてきましたが、棚の前では3つだけ見れば十分です。

瓶の形。丸い瓶ならスコットランドかアイルランド。四角い瓶ならアメリカの可能性が高い。ただし、ジョニーウォーカーは四角いけどスコッチです。例外があるから、面白いのですが。

ラベルで目に入るもの。創業年や邸宅のイラストが並んでいて「歴史を背負ってる感じ」がしたら、スコッチかもしれません。太い書体で飾り気がなくて「堂々としてるな」と思ったら、アメリカかもしれません。和紙や余白が見えて「静かだな」と感じたら、日本です。

ラベルの英語。”Scotch”や”Highland”と書いてあればスコットランド。”Bourbon”や”Kentucky”ならアメリカ。”Product of Japan”なら日本。ラベルの英語がもっと読めるようになりたい方は、「ウイスキーのラベルの読み方」もあわせてどうぞ。

完璧に見分けられなくてもいいのです。「なんとなく、この瓶はスコッチっぽいな」くらいでいい。それだけで、棚の前の時間が変わります。

まとめ——「全部同じ」が、全部違って見えてくる

「スコッチとバーボンって何が違うの?」

あのとき固まったのは、知識がなかったからではなく、「見分ける目」を持っていなかったからでした。

今なら、同じ質問をされても固まりません。味の違いは相変わらずわかりません。でも、「この2つ、瓶を並べると全然違うんだよ」くらいは言えます。

前は全部同じ茶色い瓶に見えていました。今は、「この瓶は創業年が刻んであって、なんだか歴史を背負ってる感じだな。たぶんスコッチだ」「こっちは太い書体で妙に堂々としてるな。アメリカかもしれない」「この瓶は静かだな」と、なんとなく感じるようになりました。

味はわかりません。でも、棚に並んだ瓶が、少しずつ違うものに見えています。それだけで十分だと思います。

値段の違いが気になったら「ウイスキーの値段はなぜこんなに違う?」で、種類の違いは「ウイスキーの種類と見分け方」で整理しています。


どんなタイプのウイスキーが合うか迷っている方は、4つの質問に答えるだけで自分に合う一本が見つかる「ウイスキーえらび診断」も試してみてください。


※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
※この記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。

リンクを経由してご購入いただいた場合、当サイトが報酬を受け取ることがあります。

※価格は記事執筆時点のものです。最新の価格は各販売サイトでご確認ください。


ウイスキー基礎知識の他の記事

基礎知識の一覧に戻る

ウイスキーえらび診断
味がわからなくても大丈夫。4つの質問に答えるだけで、あなたに合う一本が見つかります。
あなたに合うのは
── このタイプに合う銘柄 ──
タイトルとURLをコピーしました