メーカーズマークの赤い封蝋の秘密——ラベルを作った妻マージーの物語

ウイスキー
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ラベルを眺めてみよう

手に取ると、まず目を奪われるのは、ボトルの首から垂れる真っ赤な蝋(ろう)。

不規則に流れ落ちたその形は、一本一本違う。機械では作れない、手作業の証です。

ラベルに目を移すと、クリーム色の紙に「Maker’s Mark」の文字。その下に「Kentucky Straight Bourbon Whisky」。バーボンとは、アメリカで造られるトウモロコシを主原料としたウイスキーのこと。ところがよく見ると、Whiskey ではなく Whisky——「e」が一文字、足りません。

さらにラベルの中央には、星と「S」と「IV」を組み合わせた小さなマーク。

この赤い蝋、一文字足りないスペル、そして小さなマーク——すべてに、ある一人の女性の物語が刻まれています。

メーカーズマークを作った女性——マージー・サミュエルズ

1953年、ケンタッキー州の小さな町ロレット。

ウイスキー職人のビル・サミュエルズ・シニアは、「自分が本当に飲みたいバーボン」を作るため、35,000ドルで古い蒸留所を買い取りました。当時の金額とはいえ、一つの蒸留所を丸ごと手に入れたのです。

ビルがウイスキーの味を追求する一方で、ボトルのデザインをすべて手がけたのが、妻のマージーです。

名前、ラベル、ロゴ、ボトルの形、そしてあの赤い封蝋——メーカーズマークのブランドを「見た目」から作り上げたのは、デザインの専門教育を一切受けていない一人の女性でした。

2014年、マージーはケンタッキー・バーボンの殿堂に蒸留所の運営に直接関わった女性として初めて殿堂入りを果たしました(女性としては5人目)。

「Maker’s Mark」——名前に込められた意味

マージーがこの名前を思いついたのは、イギリスのピューター(錫の食器)がきっかけでした。

ヨーロッパの職人は、自分が作った錫の器に小さな刻印を打つ習慣がありました。その刻印を「maker’s mark(メーカーズ・マーク)」——職人の印——と呼びます。

「このウイスキーも、職人が一本一本手で作る作品。だから名前も『職人の刻印』にしよう」

そう考えたマージーは、同時にもう一つの意図を持っていました。サミュエルズ家にはかつて「T.W. Samuels」という品質の良くないウイスキーブランドがあり、その名前との混同を避ける意味もあったのです。

ラベルの暗号を読み解く

ラベルの中央に描かれた小さなロゴマーク。ここには4つの意味が隠されています。

★(星)——蒸留所の名前

星はスターヒルファーム(Star Hill Farm)を表しています。メーカーズマークが生まれる蒸留所がある丘の名前です。

S——家族の頭文字

サミュエルズ家(Samuels)の「S」。1700年代にスコットランドからアメリカに渡った一族の頭文字です。

IV——4代目の蒸留家

ローマ数字の「4」。創業者ビル・サミュエルズ・シニアが、サミュエルズ家4代目のウイスキー蒸留家であることを示しています。一族のウイスキー造りの歴史は、1700年代初頭にまで遡ります。つまり、生まれた赤ちゃんが大人になり、その子どもがさらに大人になるほどの世代を超えた歴史が、この2文字に込められているのです。

円の切れ目——暗黒の時代

ロゴの円には、右下に意図的な切れ目があります。これはアメリカの蒸留産業にとっての暗黒の時代——南北戦争、第一次世界大戦、そして禁酒法——を象徴しています。お酒を作ることが許されなかった時代があったからこそ、今こうしてウイスキーを作れることへの感謝が、この小さな切れ目に込められているのです。

赤い封蝋が生まれたキッチン

メーカーズマークの象徴ともいえる赤い封蝋。そのアイデアもまた、マージーから生まれました。

ヨーロッパの手紙文化から着想

マージーはコニャック(フランスのブランデー)のボトルコレクターでした。ヨーロッパでは大切な手紙を蝋で封印する文化があり、コニャックのボトルにもその伝統が取り入れられていました。

「バーボンにも、この特別感を。」

試作は揚げ物器で

最初の試作品が作られたのは、なんとサミュエルズ家のキッチン。マージーは家庭用のディープフライヤー(揚げ物器)で蝋を溶かし、ボトルを浸して実験を始めました。天ぷらを揚げるような道具から、世界で最も有名なボトルデザインの一つが生まれたのです。

最適な蝋の配合にたどり着くまで、6ヶ月の試行錯誤を重ねています。

なぜ「赤」なのか

1950年代当時、ボトルの封蝋に赤を使うのは珍しいことでした。マージーが赤を選んだ理由は明快——「お店の棚で、一番目立つ色だから」。

実際に、酒屋の棚に並んだメーカーズマークを見れば、その判断が正しかったことがわかります。何十本ものウイスキーが並ぶ中で、赤い封蝋は一瞬で目に飛び込んできます。

※イメージ

今も一本一本、手作業で

驚くべきことに、メーカーズマークの封蝋は現在もすべてのボトルが手作業で行われています。

約177℃(天ぷら油とほぼ同じ温度)に熱した蝋にボトルの首を浸し、素早く回転させ、垂直に立てる——この一連の動作を一本一本、人の手で行います。機械なら1時間に200〜400本のところ、手作業では100〜200本。効率を犠牲にしてでも、「一本一本が違う」ことにこだわり続けているのです。

だから、あなたが手に取るメーカーズマークの封蝋の形は、世界に一つだけのもの。

特別な色の封蝋

通常は赤ですが、特別なエディションでは色が変わります。ケンタッキーダービーの三冠馬を記念した青や緑、毎年春に発売されるミントジュレップの緑など。コレクターの間では、通常より多くの蝋がかかった「スラムダンク」ボトルも人気です。

「Whisky」——なぜ「e」がないのか

ラベルをもう一度よく見てください。

「Whisky」 と書かれています。「Whiskey」 ではなく。

アメリカのウイスキーは通常「Whiskey」と綴りますが、メーカーズマークはスコットランド式の「Whisky」(eなし)を採用しています。アメリカでこの綴りを使うブランドは、ほかにジョージ・ディッケルとオールド・フォレスターだけ。

その理由は、サミュエルズ家のルーツにあります。一族の祖先は1700年代にスコットランドからアメリカに渡ってきた移民。故郷への敬意が、この一文字の省略に込められているのです。

もう一つのデザインの秘密——ラベルの縁

ラベルの端をよく見ると、波型(なみがた)になっていることに気づきます。

実はマージーは当初、すべてのラベルを一枚一枚手でちぎることを主張しました。「すべてのボトルが特別な製品であることを、ラベルでも表現したい」と。

さすがにそれは現実的ではなかったため、妥協案として波型に裁断する方式が採用されました。この裁断も半世紀以上前から変わらない手動のラベルカッターが使われています。

ラベルのフォント——マージーの手書き

ラベルに使われているフォントは、マージーが自分の手で書いた創作書体です。

植民地時代の古い印刷機から出てきたような、温かみのあるレタリング。デザインの専門教育を受けていないマージーが、独自の感性で生み出した唯一無二の書体は、70年以上経った今もそのまま使われています。

もしお家にメーカーズマークが眠っていたら

メーカーズマークの定番(レッドトップ)は現在も手頃な価格で流通しています。ただし、過去に日本限定で販売されたブラックトップ(1995〜2004年)は事情が異なります。

黒い封蝋のメーカーズマークは、現在コレクター市場で約10,000〜20,000円で取引されることも。「実家の棚に古いメーカーズマークがある」という方は、封蝋の色を確認してみてください。赤ではなく黒なら、思わぬ価値があるかもしれません。

無料で査定してくれるサービスもあります。

ラベルが古いお酒や見慣れないボトルは、思わぬ価値がつくこともあります。
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こんなシーンにメーカーズマークを

父の日のプレゼントに

メーカーズマークは、ストーリーごと贈れるお酒です。

「なんでメーカーズマークにしたの?」と聞かれたら、こう答えられます——

「あの赤い蝋、今でも全部手作業で一本一本やってるんだって。しかもあのデザイン全部、創業者の奥さんが一人で考えたらしいよ。最初の試作は家のキッチンの揚げ物器で蝋を溶かして作ったんだって」

味の感想ではなく、デザインの裏話を添えて贈れるお酒。2,000〜2,500円という価格も、気軽に渡せるちょうどいいラインです。

もう少し特別感を出したいなら

ランク銘柄価格帯こんなシーンに
カジュアルレッドトップ 700ml約2,500円気軽な感謝の気持ち
スタンダードメーカーズマーク 46約5,000円ちょっと特別な記念日
プレミアムカスクストレングス約7,000円お酒好きな方への贈り物

メーカーズマーク46は、焦がしたフレンチオーク(フランス産の樫の木)の板を樽に入れて追加熟成させたもの。封蝋の色も定番の赤ではなく、やや深みのある赤が使われています。

お酒好きな方への誕生日・記念日に

メーカーズマークには名入れ彫刻ボトルのサービスもあります。ボトルに名前やメッセージを彫刻してくれるもので、価格はボトル込みで5,000〜10,000円程度。退職祝い、還暦祝いなどにも人気です。

もう一つだけ——この蒸留所の「すごさ」

メーカーズマーク蒸留所は、1980年に操業中の蒸留所としてアメリカで初めて「国定歴史建造物」に指定されました。日本でいえば、国宝に指定された建造物のようなもの。自由の女神やホワイトハウスと同じカテゴリの歴史的建造物です。

さらに2022年には、世界最大の蒸留所としてB Corp認証(環境・社会的責任に関する国際認証)を取得。太陽光発電の熟成庫を導入するなど、伝統を守りながら未来にも向き合っています。

そしてもう一つ。メーカーズマーク蒸留所は自社の水源と流域を持つ唯一の蒸留所です。ケンタッキーの石灰岩層で自然にろ過された湧水でウイスキーを仕込んでいます。

基本情報

項目内容
正式名称メーカーズマーク(Maker’s Mark)
蒸留所メーカーズマーク蒸留所(Star Hill Farm, ケンタッキー州ロレット)
種類ケンタッキー・ストレート・バーボン・ウイスキー
原料コーン70%、冬小麦16%、大麦麦芽14%
アルコール度数45%(90プルーフ)
容量700ml
価格帯希望小売価格 2,800円(税別)/ネット通販 約2,000〜2,500円
蒸留所設立1953年
現オーナーサントリーグローバルスピリッツ
主な受賞歴SFWSC ダブルゴールド(2021)/ ISC 金賞(2022)/ London Spirits Competition 金賞(2025)

※バーボンとは、アメリカで造られるウイスキーの一種。原料の51%以上にトウモロコシを使い、新品のオーク樽で熟成させたもの。ケンタッキー州が主産地として知られています。

メーカーズマークを手に入れるには

メーカーズマークは、サントリーが日本での販売を手がけているため、コンビニやスーパーでも見かけることがある入手しやすい銘柄です。

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※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
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