バーでウイスキーを頼んだとき、目の前に出てきたグラスの形が、前に別の店で出てきたものと全然違っていたことがあります。
片方はワイングラスのように口がすぼまった背の高いグラス。もう片方はずっしりした底が厚いグラス。同じ「ストレートで」と頼んだはずなのに、グラスが違うだけで、なんとなく別の飲み物みたいに感じました。
後から調べてみると、グラスの形には理由がありました。しかも、知っておくべき形はたった4つだけでした。
この4つだけ知っておけばいい
ウイスキーのグラスは種類が多く見えますが、基本は4つの形に分かれます。飲み方に合わせて使い分けるのが一般的です。
① テイスティンググラス——香りを集めるチューリップ型
口がすぼまったチューリップのような形をしたグラスです。ワイングラスを小さくしたような印象で、ステム(脚)がついています。
この形には明確な理由があります。底が膨らんでいることでウイスキーの表面積が広くなり、香りが立ちやすくなる。そして口がすぼまっていることで、立ち上った香りが逃げずにグラスの中に留まります。鼻を近づけたとき、香りがぎゅっと集まって届くわけです。
蒸留所の職人やブレンダーが品質チェックに使うのもこの形のグラスです。ウイスキーの世界で「グレンケアン」という名前を聞いたことがあれば、それがまさにこのタイプ。スコットランドのグレンケアン社が作ったテイスティング専用グラスで、世界中の蒸留所で採用されています。
ステム(脚)がついているのは、手の温度がウイスキーに伝わるのを防ぐため。手の熱で温まると香りの出方が変わるので、できるだけ液体に触れないようにする設計です。
こんなときに: ストレートやトワイスアップ(同量の水を加える飲み方)で、じっくり香りを楽しみたいとき。山崎やザ・マッカランのようなシングルモルトをゆっくり味わうのに向いています。
② ロックグラス——氷を受け止める低くて広いグラス
背が低く、口が大きく開いた、どっしりとしたグラスです。「オールドファッションドグラス」とも呼ばれます。
口が広いのは、大きな丸氷やロックアイスを入れるため。氷を入れてウイスキーを注ぐ「オン・ザ・ロック」が、このグラスの基本的な使い方です。底が厚く重いのは、氷を入れても安定するようにするため。
テイスティンググラスが「香りを閉じ込める」設計なのに対して、ロックグラスは「開放的に楽しむ」設計です。口が広い分、香りは自然に広がります。氷が溶けるにつれてウイスキーの表情が少しずつ変わっていく、その変化をゆったり眺めるグラスです。
ガラスが厚く作られているものが多いので、手に持ったときの重みに安心感があります。バーのカウンターで出てくるウイスキーグラスとして最もイメージしやすいのが、この形かもしれません。
こんなときに: ロックで飲むとき全般。サントリーオールドやワイルドターキーのように、しっかりした味わいのウイスキーを氷で冷やしながら楽しむのに向いています。
③ タンブラー——ハイボールの定番、背の高いグラス
背が高く、まっすぐな筒型のグラスです。日常的にジュースや水を入れて使っているグラスに近い形です。容量はだいたい300〜400ml、350ml缶のビールがちょうど入るくらいのサイズ。
ハイボール(ウイスキーのソーダ割り)を作るときに使うのがこのグラスです。背が高いのは、ウイスキー、氷、ソーダの三層がきれいに入る容量を確保するため。炭酸が抜けにくいように口が小さめに作られているものもあります。
角瓶のハイボールや、ブラックニッカのソーダ割りなど、日常的にウイスキーを楽しむ場面で最も出番が多いグラスです。
こんなときに: ハイボール、水割り。家でウイスキーを日常的に楽しむなら、まずこの形が一つあると便利です。
④ ショットグラス——一口の量を測る小さなグラス
容量30〜60mlの小さなグラスです。バーで「シングルで」と頼んだとき、30mlを測るのにも使われます。ウイスキーの「シングル」は30ml、「ダブル」は60ml。ショットグラスは、この計量の基準でもあります。
小さいグラスでくいっと飲むイメージがあるかもしれませんが、実際はストレートのウイスキーを少量ずつ楽しむためのグラスです。テイスティンググラスほど香りを楽しむ設計にはなっていませんが、手軽にストレートを試すにはちょうどいい。
こんなときに: 少量のストレートを手軽に。複数の銘柄を少しずつ比べてみたいとき。
最初の1脚をどう選ぶか
4種類あると、「どれを買えばいいんだろう」と迷います。
一つだけ選ぶなら、自分がウイスキーをどう飲むことが多いかで決めるのが一番確実です。
| 飲み方 | 向いているグラス | 予算の目安 |
|---|---|---|
| ハイボール・水割りが多い | タンブラー | 500〜2,000円 |
| ロックが好き | ロックグラス | 1,000〜3,000円 |
| ストレートで香りを楽しみたい | テイスティンググラス | 1,000〜2,000円 |
| いろいろ試してみたい | ロックグラス | 1,000〜3,000円 |
「いろいろ試してみたい」場合にロックグラスを挙げたのは、ロックグラスが最も汎用性が高いからです。ロックはもちろん、ストレートを注いでも様になりますし、少量の水を加えるトワイスアップにも使えます。
グラスの「縁の厚さ」で印象が変わる
グラスを選ぶときに、もう一つ知っておくと役に立つことがあります。グラスの縁(リム)の厚さです。
縁が薄いグラスは、唇に当たる感触が繊細で、ウイスキーがすっと口に入ってきます。縁が厚いグラスは、しっかりした感触があり、ゆっくり傾ける動作になります。
高価なグラスほど縁が薄く仕上げられていることが多いのですが、薄ければ良いというわけでもありません。ロックグラスは氷がぶつかるため、ある程度の厚みがあった方が安心です。
100円ショップのグラスと、数千円のグラスの違いはどこにあるのか。デザインや素材もありますが、実はこの「縁の薄さ」が大きい。もし「グラスで何が変わるの?」と思ったら、縁の厚さだけ意識して比べてみてください。同じウイスキーでも、口当たりの印象が変わることに気づくはずです。
「家にあるグラス」でも構わない
ここまで4種類を紹介しましたが、正直に言うと、専用グラスがなくても問題ありません。
家にある普通のコップでハイボールを作っても、ウイスキーの味が台無しになるわけではありません。マグカップでコーヒーを飲んでも、コーヒーはコーヒーです。
ただ、グラスを変えると「同じウイスキーなのに、ちょっと違う」という体験ができます。それが面白いから、ウイスキー好きはグラスにこだわるわけです。
最初から揃える必要はまったくありません。まずは一つ、自分の飲み方に合った形のグラスを試してみる。それだけで、普段のウイスキーがほんの少し特別に感じられるようになります。
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この記事を読んだ方へ
ウイスキーの基礎知識:
- 飲み方ガイド — ストレート、ロック、ハイボール。それぞれの楽しみ方
- 熟成の仕組み — ラベルの「12年」が意味すること
- 保存方法 — 開けた瓶と開けていない瓶、それぞれの正解
- 種類と見分け方 — シングルモルトとブレンデッドの違い
- ラベルの読み方 — ラベルには、ちゃんと理由が書いてある
グラスと相性の良い銘柄:
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
※価格は記事執筆時点のものです。最新の価格は各販売サイトでご確認ください。

