「竹鶴」と書かれたラベルを初めて見たとき、地名だと思っていました。山崎、白州、余市——ウイスキーの名前はだいたい土地の名前だから、竹鶴もそうだろう、と。
人の名前だと知ったのは、だいぶ後のことです。しかも、その人自身がつけた名前ではなかった。
ラベルを眺めてみよう
2020年のリニューアルで、竹鶴ピュアモルトのラベルは黒から白(ベージュ)に変わりました。
新しいラベルの見どころは3つあります。
1つ目は「竹鶴」のロゴ。ラベルの中央に堂々と配された二文字が、このウイスキーの名前であり、ニッカウヰスキー創業者の名前です。
2つ目は竹鶴政孝の直筆サイン。ラベルをよく見ると、創業者本人の筆跡を再現したサインがあしらわれています。本人がこの世を去ってから21年後に生まれたウイスキーに、本人の筆跡が刻まれている。
3つ目はニッカウヰスキーのエンブレム。社章が静かに、しかし確かにラベルの一部になっています。
本人が名付けなかったウイスキー
竹鶴政孝は1979年に85歳で亡くなりました。
「竹鶴」という名前のウイスキーが初めて世に出たのは2000年。「竹鶴12年ピュアモルト」として発売されました。没後21年——生まれた赤ちゃんがお酒を飲める年齢になるほどの時間が経っていました。
つまり「竹鶴」は、創業者本人が自分の名前をつけたウイスキーではなく、後継者たちが創業者に捧げたウイスキーです。
竹鶴政孝は生前、自社製品に自分の名前をつけることはしませんでした。蒸溜所のある「余市」という土地の名前はウイスキーに使いましたが、自分の名前は使わなかった。それを後継者たちが、創業者の功績を讃えてブランド名にしています。
余市のラベルには「土地の名前」が刻まれ、竹鶴のラベルには「人の名前」が刻まれている。同じニッカから生まれた2つのウイスキーは、対になっています。
2つの蒸溜所が出会う一本
竹鶴ピュアモルトの特徴は、「ピュアモルト」であること。
余市は余市蒸溜所だけの原酒で作るシングルモルト。竹鶴は、余市蒸溜所と宮城峡蒸溜所、2つの蒸溜所のモルト原酒を合わせて作るウイスキーです。
なぜ2つの蒸溜所を使うのか。竹鶴政孝は、スコットランドでのウイスキー修行から「1つの蒸溜所だけでは理想のウイスキーは作れない」と学んでいました。個性の異なる原酒を組み合わせることで、1つの蒸溜所だけでは到達できないバランスが生まれる。
余市蒸溜所は北海道。石炭直火蒸溜という、世界でもほぼここだけの製法を今も続けています。宮城峡蒸溜所は仙台。スチーム加熱による穏やかな蒸溜を行っています。北海道と仙台、正反対の個性の原酒が出会って1本になる——それが竹鶴ピュアモルトです。
竹鶴政孝が1934年に余市に蒸溜所を作り、1969年に宮城峡に2つ目の蒸溜所を作ったのは、まさにこの「組み合わせ」を実現するためでした。1つ目の蒸溜所から2つ目まで、35年。竹鶴ピュアモルトは、創業者が生涯をかけて追い求めた設計図そのものです。
黒から白へ——2020年のリニューアル
2020年、竹鶴ピュアモルトは大きな転換点を迎えました。
年数表記のあった竹鶴12年、17年、21年、25年が原酒不足により終売。代わりに、年数表記のない「竹鶴ピュアモルト」がリニューアルして再登場しています。
ラベルは黒から白へ。年間22,000ケースの数量限定で、店頭で見かけたら次にいつ出会えるかわかりません。
お家に竹鶴の旧ボトルが眠っていたら
年数表記のある竹鶴は2020年に終売。現在、これらのボトルにはプレミアがついています。
| ボトル | 流通相場(2026年時点) |
|---|---|
| 竹鶴12年(終売品) | 約20,000円 |
| 竹鶴17年(終売品) | 約45,000円 |
| 竹鶴21年(終売品) | 約88,000円 |
| 竹鶴25年(終売品) | 約250,000円 |
竹鶴25年は25万円前後。飲まないまま保管しているなら、一度査定に出してみるのも選択肢です。
ラベルが古いお酒や見慣れないボトルは、思わぬ価値がつくこともあります。
→ 古いお酒の価値を無料でチェックしてみる(福ちゃん)
※未開封品に限ります。開封済みのボトルは買取対象外となる場合があります。
こんな人に合う一本
- ニッカウヰスキーの名前は知っているけれど、「竹鶴」はまだ手に取ったことがない方
- 余市を知って、ニッカの世界をもう一歩深く知りたい方
- NHK「マッサン」を見て竹鶴政孝に興味を持った方
- 2つの蒸溜所の原酒が1本になるという背景に惹かれる方
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 竹鶴ピュアモルト |
| 英名 | TAKETSURU PURE MALT |
| 製造元 | ニッカウヰスキー(アサヒグループ) |
| 原酒 | 余市蒸溜所+宮城峡蒸溜所のモルト原酒 |
| 種類 | ピュアモルト ジャパニーズウイスキー |
| アルコール度数 | 43% |
| 容量 | 700ml |
| 価格帯 | 参考小売価格 7,700円(税込)/ 流通価格 約9,500円前後 |
| 年間生産量 | 22,000ケース(数量限定) |
| 発売 | 2000年(竹鶴12年として)/ 2020年リニューアル |
| 創業者 | 竹鶴政孝(1894-1979)/ NHK「マッサン」のモデル |
※ピュアモルトとは、複数の蒸溜所のモルト原酒を合わせたウイスキーのこと。1つの蒸溜所の原酒だけで作る余市(シングルモルト)とはここが違います。
→ Amazonで口コミも見てみる(竹鶴ピュアモルト 700ml)
→ 楽天市場で価格を見てみる(竹鶴ピュアモルト 700ml)
竹鶴という名前が地名ではなく人の名前だと知ったとき、ラベルの見え方が変わりました。そこに刻まれているのは「商品名」ではなく、後継者たちから創業者への手紙のようなものです。
本人は自分の名前をウイスキーにつけなかった。だからこそ、後からつけられた「竹鶴」の二文字には、言葉にしなかった敬意が詰まっている。ラベルを眺めると、そんなことを考えます。
🔍 自分に合うウイスキーがわからない?
30秒診断で見つけてみる
この記事を読んだ方へ
同じニッカウヰスキーの物語:
- 余市 — リンゴジュースを売りながらウイスキーを待ち続けた男と、世界唯一の火
- ブラックニッカのおじさんは誰? — ラベルのヒゲの紳士の正体と70年の物語
同じジャパニーズウイスキー:
- 響のボトルに刻まれた「24の季節」 — ブラームスの交響曲から生まれた物語
- イチローズモルトのラベルに描かれた一枚の葉 — 400樽を救った男の物語
ウイスキーの基礎知識:
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。
※この記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。
リンクを経由してご購入いただいた場合、当サイトが報酬を受け取ることがあります。
※価格は記事執筆時点のものです。最新の価格は各販売サイトでご確認ください。


